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完全バランス再生 について [オーディオ]

「完全バランス再生」という言葉で デジタルから出口まで ホットコールドが完全に対象となっている再生を実験したのが2006年7月のエンゼルポケットさんでの実験。その結果はA&V Village 2006年の9月号ですから 私(西出晃)の実験開始からですと既に 2年くらいもたってしまいました。英語で全て言うと 「パーフェクトバランスドライブperfectly balanced drive 」  「アブソリュートバランスドライブabsolute balanced drive 」とでもいうのでしょうか!? 日本語だと「完全平衡駆動」でしょうか(笑)

 このときは DACチップ2ヶでホットとコールドを生成し、それを2回路使い アナログ回路にアンバランスーバランス変換器が一つも入らない再生方式として脚光を浴びました。最近でも間違えている人がいるので 繰り返しますが、アンバラーバランス変換が一箇所でもはいると 最後の最後まで異なる波形が伝送され、完全なバランス再生とはなりません。これは意味が異なります。一部分だけなら 既に何十年も前から実施されていることです。私が言いたいのは デジタルだからこそできた と言える ホットコールド 全く同一回路で、回路のバラツキ以外にはホットコールドの信号が全く変わらない(もちろん その仕組み上反転していますが)再生を言います。 

さて 完璧なスピーカー(ヘッドフォン)のドライブを考えた場合何を目指さなくてはならないのでしょうか?

 たとえば正弦波再生を考えた場合 スピーカーを押側 (凸) とへこむ側 〔凹)の動きがまったく同じでないと理想的ではありません。言い換えると ドライブは 正負無限大に渡ってその特性が直線でないといけないのです。しかし実際は回路は細かく見ると全て非直線ですし、そのドライブ能力は無限大ではありません。(ここで言っているのは出力ではなく内部インピーダンスが0ということ)

では 一般の回路構成はどうなって言うのでしょうか?この回路ではアンバランスのDACをバランスに変えてプリアンプで受け それをアンバランスに変え ボリュームコントロールの後でまたバランスにしてパワーアンプに送ります。その後パワーアンプでアンバランスに変更しスピーカーをドライブしています。この非反転アンプと反転アンプでは出てくる信号が全く同じではありません。これが何段にも入ります。私が 一般にはアンバランスの方がHiFi再生にとって都合が良いというのは ここから来ています。バランス回路は無駄な回路が多いのです。 

 

さて 完全バランスドライブはこの回路になります。DACから全ての回路が 上下全く同一になっているのがおわかりいただけると思います。もちろん 無駄な回路は入りません。

スピーカーの動きは 正側が+に移動するとき 負側は 反転していますので マイナス側に移動して アンバランスの2倍の波高値になります。正側がマイナスの時は負側は反転してプラスですから 上下(ホットとコールド)がどちらになっても 全く同じ特性を示すはずです。これが完全バランス再生です。

これを実現するためには DACのホットコールド(図で +-) が全く同じでなければなりません。一般の機器のようにアンバランスーバランス変換が一つでも入ると 完全バランスドライブにはなりません。

さて ヘッドフォンの話しになりますと 趣が少し変わります。それは共通インピーダンスの問題です。

難しいですよね。 ちょっと長く書きましたので 次回にしましょう。

完全バランス再生(パーフェクトバランスドライブ) は本当に地に足の付いた抜け 空気感の出る異次元の音がします。


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keita

バランス再生に取り組もうと考えているので、興味深く読ませて貰いました。
どことなく曖昧だった、バランス再生の意味がよく分かりました。

この記事の図を見て疑問に思ったことがあります。
図にはDAC以前の流れは書かれていませんが、完全バランス再生を目指すには
「DACへの入力」にも気を遣う必要があるのでしょうか?

私はPCで音楽を聞いているのですが、その際にUSB-DACとUSB-DDCを組み合わせています。
DACの方がUSB入力で24Bit/96kHzに対応していないので、24Bit/96kHz対応のUSB-DDCを使っているのです。
このUSB-DDCには、同軸出力とAES/EBU出力が設けられています。
完全なバランス再生を目指すために、フルバランス出力のDACには
同軸ではなくAES/EBUで接続するべきなのでしょうか?
by keita (2010-08-16 16:21) 

OJI

DAC以前はアナログではありませんから デジタルをバランスで受ける必要はありません。デジタルはデータが合っていて(ほとんどのコンピュータオーディオはデータとSPDIF間が一致しておりませんが・・・) とクロックがしっかりと伝送できればいいだけで、今回のバランスという意味には 全く関係がありません。

SPDIF(AES/EBUも考え方は同じ)デジタルはデータとクロックが重乗されて伝送されています。 アナログになる際の 今回の記事のバランスとは 全く関係が無く 左右のデータが伝送されてDACで アナログになる際に プラス側(スピーカーコーン紙を押す側)とマイナス側(スピーカーコーン紙を引く側に波形として出力されるだけです。

今回問題としているのは 通常のオーディオでは 押す側と引く側が同じ動きをしていない と言うことを問題にしています。 これを完璧にする場合は デジタル部分で(詳しく言うと アナログに戻す瞬間)にプラスとマイナスが同一波形になってないといけません。一般の物では シングルエンドなので 当然押すと引くは回路が変わります。 アンプをブリッジにすると今度は 必ず DAC後のどこかでアンバランスバランス変換回路が入り、この回路が プラス側とマイナス側で同じではないことが問題なのです。 回路が変われば 特性は変わって当然です。 しかしながら そうはいっても 完璧ではないと言うだけで 一般の業務や実用上は バランス伝送はノイズ低減という意味からすると問題無い為に使われています。 こういう意味では 今回の話題は ノイズ低減と言う目的ではありません。

デジタル時点で位相反転するバランスのDACは市販されていないと思います。
ここが今回の話題の中心となります。
一度アナログになってしまってから バランスにするのでは 完璧ではありません。前述の理由です。

しかしながら 位相反転(アンバラバランス変換)回路を理想的に近づけ、今回のように その後全て アンバラに戻すことなく伝送すれば システム上は 完璧ではありませんが、かなり理想と近いものになります。

できれば 可聴帯域内では 周波数に対する位相差のない回路を使えば DAC自体で位相反転をするのに近い構成になるはずです。 

良質の アンバラバランス回路を搭載している DACから 同じような構成にすれば今回の様な構成に近いものにすることが可能です。
by OJI (2010-08-27 12:52) 

keita

詳細で丁寧な回答ありがとうございます。
記事の趣旨を十分に理解できていないための、見当違いな質問でした。
また、デジタル段でのバランスとアナログ段でのバランス、の
違いも理解が不十分だったようです。

今回の回答は、バランス再生を目指すうえで
とても参考になりました。
本当にありがとうございます。

by keita (2010-09-07 15:39) 

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